年金保険の二重課税の判決解説(2) 坂本嘉輝 3/3
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年金保険の二重課税の判決解説(2) 坂本嘉輝 3/3

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年金保険の二重課税の判決解説(2) 坂本嘉輝 3/3


7.財産と所得


こんなことになってしまった原因の一つは、「財産」と「所得」という概念をごっちゃにしているからだということもできます。

「相続税」というのは相続される財産に対する課税です。「財産」というのは会計で言えば貸借対照表の世界です。それに対し「所得税」というのは所得に対する課税です。「所得」というのは利益などと同様の、損益計算書の世界です。

「保険金」というのは財産なのでしょうか、所得なのでしょうか。「保険金を貰う」と考えると所得のような気がしますね。「貰った保険金」と考えると、財産のような気がしますね。でも「どっち?」ということになると、やっぱり所得のような気がします。

そこで、相続税で【死亡保険金をみなし相続財産とする】という規定を解釈するとき、保険金という所得を財産にするわけにいかないので、むりやり、相続税に書いてある「保険金」というのは実は「保険金を貰う権利」という意味だということで、「財産」に変身させてしまうわけです。

次に【みなし相続財産は所得税非課税】だという所得税の規定を解釈するとき、財産はもともと所得じゃないので、仕方なくその「財産」というのは実は「財産を貰ったことによる所得」という意味だということで、むりやり「所得」に変身させてしまいます。

その結果、死亡保険金が所得税非課税になる過程で、「死亡保険金」は「死亡保険金を貰う権利」に変身し、さらにそれが「死亡保険金を貰う権利を貰ったことによる所得」に変身し、その「死亡保険金を貰う権利を貰ったことによる所得」は元の「死亡保険金」と同じだから、これは所得税非課税だという、何ともまわりくどい議論になってしまうのです。

これが年金なるともっとやっかいで、【相続税法に書いてある「年金」というのは「年金を貰う権利(年金受給権)」ということだ。所得税法に書いてある非課税所得となる「みなし相続財産」は「年金受給権を貰ったことによる所得」のこと】だということになります。

保険金の場合は「保険金を貰う権利を貰ったことによる所得」は元の「保険金」と同じだという具合に、何となく納得してしまうのですが、年金の場合は「年金を貰う権利を貰ったことによる所得」はどうやって計算したら良いか、どこにも書いてありません。

でも所得税法にはないけれど、相続税法の方には「年金を貰う権利」の評価額の計算方法が規定してあります。別々の法律だけどこの際仕方がないのでこれを使ってしまおうということで、「年金を貰う権利を貰ったことによる所得」の額は、相続税法の規定による「年金を貰う権利」の評価額と同じだと決めてしまったというのが、今回の最高裁の判決です。
これも確かに一つの考え方ではありますが、そのように決めてしまう根拠はどこにあるのかなぁと思います。

もし今回の議論を踏まえて所得税法や相続税法を変えることになるのであれば、このあたりをスッキリさせると良いのですが、多分そこまで突っ込んだ変更にはできないでしょうね。影響する範囲が大きくなり過ぎてしまいますから。

保険金などというのはまだ分りやすいのですけれど、会計の世界でも資産・負債と収益・費用の区別は時として非常に難しいもので、常に議論の的になり、どうにもならなくなってエイヤッとルールを決める。何年かたってそれがうまく行かなくなると、またエイヤッとルールを変えるということを繰り返しています。

税法の方はそう簡単にルールを変えてもらうと困るのですが、時には仕方ないことかも知れませんね。

8.成文法と慣習法


法律には成文法と慣習法(あるいは不文法)という区分があります。すなわちきちんと法律の条文という文章になっているような法律と、文章の形にはなっていないけれど実務的に、あるいは慣習的に様々な事例が積み重なって法律となっているものとの区分です。

日本では原則として法律は成文法ということになっているのですが、現実問題として法律にありとあらゆることが書き切れるわけじゃありません。また現実に具体的に例外的な事例が発生する都度、法律を改正したり追加したりするわけにも行きません。そこで法律の解釈だとか具体的な運用のルールだとか判例だとかが積み重なり、元々の法律の文章と一体となって法律として適用するということになります。すなわち成文法に不文法を追加したような形です。

特に税法は日常的に誰にでも該当する、お金のからむ話ですから、微に入り細に入り事細かにルールが決まっています。その細かいルールを運用するため、法律全般の専門家である弁護士とは別に税法だけの専門家として税理士という制度まで作っているくらいです。その細かいルールは全て法律には書き切れないので、様々な施行令と施行規則とか通達だとか、それらの解釈だとか様式(書式)だとか、あるいは判例だとかになっています。これらが全て総合的に一体となって法律が出来上がっているということになります。

現在そのような成文法の法律である「相続税法」や「所得税法」そのものの他に、それを取り巻く上記のような様々なものは、基本的に国税側の考え方に立ってでき上がっています。

今回の最高裁の判決は「所得税法」の文言を捕らえて、最高裁判所独自の解釈にもとづいて、上記のようにこれまで実務的に積上げてきた様々なものも、あるいは「所得税法」制定時にその法案を作った人達の考え方も否定して、新しいルールを作ってしまったもののように思えます。

もちろん法律を改訂する(改正する)のであれば、今までと違う法律を作って従来の法律の適用をやめるというのはいくらでもある話です。しかし法律を改訂するのでなく、その解釈を変更して今までの法律の適用を全て否定するというのは、非常に危険なやり方ではないかと思います。

9.三権分立と憲法違反


日本は憲法で三権分立を謳っています。もちろんこれは建前の話で、実際には大幅にゆがめられた姿になっているというのも事実ですが、だからと言って裁判所が、特に憲法の番人と呼ばれることもある最高裁判所が、憲法を無視して良いということにはならないでしょう。

今回の最高裁の判決は4人の裁判官が「法律の判断」をしたのではなく、「法律の改正」をしてしまった。そのように思います。

三権分立のうちの、国会にあるはずの立法権を勝手に横取りしてしまったように思えます。

もちろん立法権を持つ国会の先生方も、行政権を持つといいながら実質的に立法権も持っているお役人達も、正面きって最高裁の判決に異を唱えているようには見えませんが、だからといって何かというと法律が憲法違反かどうか判断する最高裁判所が憲法違反はまずいんじゃないでしょうか。

成文法となっている法律には、詳細の部分にまで書き切れない部分があります。それを様々な形で不文法で補強しながら現実に運用しているものを、成文には書いてないからと言ってある日突然それまでの実務の積み重ねを法律違反だとして否定してしまうのでは、国民は安心して暮していけないんじゃないでしょうか。

今回の件、たとえば国税側の解釈に立ってお客さんにアドバイスした税理士さんがいて、今回の最高裁の判決を受けてお客さんから損害賠償の請求を受けるなんてことになったら、その税理士さんはどうしたら良いんでしょう。

いずれにしても新聞の報道によると、国税当局は税金の還付をこの10月にも始めるということのようです。一体どういうことになってしまうんでしょうね。

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年金保険の二重課税の判決解説(1) 坂本嘉輝
生命保険年金は二重課税との微妙な最高裁判決(1)






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