50年遅れていることが明確となった保険業界 〜各保険会社の不払いに関するプレスリリースについて〜 2007年4月13日生命保険各社が、保険金や給付金等の不払いについて過去5年間の調査結果の経過報告と、それに伴うお詫びをプレスリリースしました。 各社、この後の改善策も含めて発表していましたが、本質的なところの具体性に欠けているように感じる点があったように思います。
改善策として各社は、主に保険金、給付金支払い業務の見直しやスタッフの増員といったものを挙げており、商品施策や販売体制についての抜本的な見直しには言及していないところがほとんどです。多少、それらの点について触れている部分はあるかもしれませんが、基本的には「支払い体制の強化、見直し」で対応しようとしているスタンスであると思います。
損保業界を例に取ると、自動車保険の特約は従来(この3月まで)約500種類あったのを、この4月から半減させて不払いを構造的に減らす施策をとっています。全社くまなく目を通したわけではありませんが、ざっと見たところ「通院給付の特約」を廃止するとしているのは第一生命のみでしたが、この対応だけでは単なる「トカゲのシッポ切り」にしか思えません。(やらないよりマシですが)
ありがた迷惑な特約各種 今回不払いの3本柱のひとつとなった「通院特約」について考えてみます。
概ね1回の通院につき3千円というパターンが多いのですが、基本的にこの特約は「入院に伴う通院」に適応されます。
多くの場合、入院給付金の請求は退院した際、担当医に診断書を書いてもらって保険会社に請求する流れになります。
治療費やその他の経費(交通費や食事代など諸々)は立て替え、またははじめに契約者は負担しているわけですから、一刻も早く保険会社から給付金を支払ってもらいたいわけです。
退院後すぐ診断書を書いてもらって保険会社に支払い請求をするのは順当であると思います。
ここで「通院給付金」です。
「異常がなくてもしばらく月に1回来てください」と担当医から指示された場合、1回3千円の給付のために約5千円かかる診断書を書いてもらうわけにも行かず、治療完了まで待って最後に担当医に診断書を書いてもらうのが賢いやり方かもしれません。
しかし、「通院給付」の規定で、「退院後180日以内」などという規定があります。 このケースですと、「3千円×6回(月1回を6ヶ月)=1万8千円」となり、
手間と約5千円かけて1万8千円を請求するかどうかです。
診断書をその場ですぐ書いてくれる担当医の先生は極わずかですので、通院が完了したあと、もう一度時間と交通費をかけて診断書を取りに行かなくてはならないことになります。 (保険会社によっては、5万円以下の支給に関しては領収書で対応してくれるところがありますので確認して下さい。)
問題なのは、以上のような状況や段取りを保険契約時に募集人が話しをし、契約者が理解しているかどうかではないでしょうか。
また、契約者の多くはこの「通院給付」の特約に多くの国内生保のセット販売では、「通院給付」をはじめたくさんの特約がついてきます。
販売する側としては、ごく一部の良心的な募集人を除いて、お客様が「これはいらない」と言わない限り、そのままくっつけてしまいます。
つまり、お客様が「いらない」と言わない限りフル装備となってしまい、余分なものを削除しなければならない「削除型」の提案、販売が問題で、販売する方もされる方も、保険加入時に深く考えないように誘導しているかのようです。
当たり前のことですが、お客様は保険についての知識が乏しいことが前提で、販売する方は一応プロなわけですから、勧められたセット商品に対してお客様が「これはいらない」と言うケースは極めて稀だと思います。 (このサイトに来ている方はたぶん違うと思いますが)
また、商品構造上では、「この特約Aをつけるには別の特約Bを〇〇万円以上つけなければなりません」などという、わけのわからない縛りが多く、設計上極めて不自由な状態であり、削除したくてもできないケースがあることも問題です。
手間はかかりますが、最低限の保障から考える「積上げ型」であれば余分あるいは無意味な特約を、わけがわからないまま付加することはなくなり、販売する側もされる側も保障内容、特に基本的な死亡や入院以外の特約部分について真剣に考えるはずです。
勝手に改善策 勝手に改善策をつくってみました。 実現している保険会社や募集人、代理店は存在していると思いますが、大多数を占める大手国内生保向けの改善策として考えてみました。
1、セット販売全面禁止
生命保険の販売においては、保険会社お手盛りとなりうる「セット販売」を禁止する。
生命保険販売時には、顧客からのヒヤリングから必要最低限の保障金額、保障期間を設定することから始めなければならない。
その上において、顧客からの要望があった場合、または明らかに顧客にメリットがあると思われる商品や特約が存在する場合にのみ、その商品、特約を提案するものとする。
また、提案の際には、その商品、特約の給付される場合、されない場合の実例をそれぞれ挙げて、顧客に示さなければならない。
2、特約商品の抜本的な見直し
各種特約については、目的あるいは機能ごとに独立した取扱とし、不当な抱き合わせや、主契約との関連性のおいての縛りを極力緩和しなければならない。
更に発展させて考えれば、上記のような規定をつくった上で精査する団体またはセクションを、金融庁管轄の下、現場と保険商品に精通していて、保険会社から影響を受けないかたちで設立できればと思います。
自浄能力に乏しい保険業界の実態を目の当たりにして強く感じるのですが、流通業界ではダイエーの中内さんを筆頭に有能な経営者たちが、メーカーサイドではなく消費者サイドからの視点でサービスを考え、動き始めたのが今から約50年前の出来事ですが、保険業界においては、やっとその動きがはじまるかもしれない・・・つまり保険業界は過去の護送船団の足踏みや名残もあり、流通業界に比べて、約50年遅れていることが明確になったのかもしれません。
2007年4月
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